2021年03月14日の図書館だより

2021年03月14日(日)

先週の木曜日、3月11日は朝起きて窓の外を見ると雲ひとつない青空が広がっていました。東日本大震災から10年を迎えたこの日は、全国的におだやかな晴天だったようです。これほど暖かくて穏やかな天気は、3月では珍しいことのように思います。

先週は、テレビや新聞で東日本大震災の特集を目にする機会が多く、またなるべくきちんと見るように、そして読むようにしていました。ここのところ、よくテレビで流れる「このあと地震、津波映像が流れます」という予告が入った後に放送される映像を見ると、10年前の映像だということが頭ではわかっているのに、「逃げて」と心の中で声を上げてしまい、おかしなものだなと思っていました。

少し前に新聞を読んでいると、いとうせいこうさんと若い方々の座談会が載っていました。いとうせいこうさんといえば、私にとっては、みうらじゅんさんの親友にあたる方(つまり、とても偉大な存在ということになります!)ですが、作家としても活躍されており、東日本大震災を題材とした『想像ラジオ』という小説を書かれています。

記事の中では、まず「僕のような震災の非当事者がこういう踏み込んだことを書いていいのか」という思いがあったことが語られた後に、「東北にも亡くなった方がたくさんいて、今も生きている方がたくさんいて、また別の苦しみを持っている人たちが別の場所にたくさんいる。お互いを想像でいたわりあうということは、すごく大事で、人間らしいことで、目指すべきことです」という言葉がありました。

当時者じゃなくても、被災していなくともいたわり合えるー。先日NHKの番組で見かけた作家の柳美里さんも、悲しいこと、苦しいことを、他人事ではない自分の身に引き受けることはできる、思いを寄せることはできると話されていました。

どちらも、会いたい人と会えない、人と人がつながることが難しいコロナ禍の現在を生きる私にとってとても心に残る言葉でした。残念ながら、コロナ禍もまだまだ収束までは時間がかかりそうですが、この禍が当事者・非当事者という壁をなくし、人をいたわり、相手を思うことの大切さに気付く一つのきっかけとなればいいのに、と思います。

「10年」という数字は区切りになるわけでもなく、これからも思い続けることを大切にしていきたいです。あらためて、東日本大震災で亡くなれた方のご冥福をお祈り申し上げます。

『想像ラジオ』いとう せいこう/著
「読んでみたけど、わからない」という声も多い作品ですが、私としては「わからなくても大丈夫」と言いたいところ。いとうさんは、実は日本初のラッパーとしても知られる方です。頭で理解するのではなくて、音の響きやリズムを感じることが、この作品の読み方、楽しみ方ではないかな、と個人的には思っています。

『JR上野駅公園口』柳 美里/著 昨年11月に全米図書賞を受賞した作品です。読み進めていくうちに、主人公の男性の顔が見えてくるようでした。「人生の転落」という一言では表現できない、深い悲しみを感じました。

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