カズオ・イシグロさん ノーベル文学賞を受賞
今年のノーベル文学賞に、日系イギリス人のカズオ・イシグロさんが選ばれました。
現在『10月の本』展開中の入口側コーナー7に、カズオ・イシグロさんの著作を集めました。
どうぞご覧ください。
カズオ・イシグロ
1954年、日本人の両親のもとに長崎市で生まれ、5歳の時に海洋学者だった父が英国の研究所に招かれ一家で移住。83年に英国籍を取得。以来、英国で暮らし、長く日本の土を踏むことはなかった。ケント大学で英文学や哲学、イーストアングリア大学で文芸創作を学んだ。作品は英語で執筆する。
記憶や生命など人間の存在にかかわる普遍的なテーマを描き、ミステリーやSFを取り込むなど一作ごとに変化する作風で、「世界文学の旗手」と目されてきた。今年、ノーベル文学賞を授賞。スウェーデン・アカデミーは、授賞理由を「人と世界のつながりという幻想の下に口を開けた暗い深淵(しんえん)を、感情豊かにうったえる作品群で暴いてきた」と評価した。
主な作品
82年の長編デビュー作『遠い山なみの光(当館では所蔵なし)』は、英国で暮らす日本人女性を主人公に故郷を思う気持ちや時間の移ろいを主題とし、王立文学協会賞を受賞。続く『浮世の画家(当館では所蔵なし)』(86年)でも戦後の日本を舞台に、日本人を主人公に描いた。
名を世界に広めたのは、英国で最も権威あるブッカー賞を受けた『日の名残り(当館では所蔵なし)』。英国貴族の執事を描き、大国の栄光と没落、戦争の問題を綴った。映画化もされ、アカデミー賞8部門にノミネートされた。
カフカ的不条理に放り込まれたピアニストが主人公の『充(み)たされざる者(上・下)』(95年)、日中戦争下の上海を舞台にしたミステリー仕立ての『わたしが孤児だったころ』(00年)では、新境地を開拓した。
05年の『わたしを離さないで』は、臓器を提供するためにクローン技術で生まれた若者を主人公にし、日本でも14年に蜷川幸雄さんの演出で舞台化、16年にはTBSでドラマ化されて話題となった。
15年の『忘れられた巨人』は、伝説の英雄アーサー王が死んだ後のイングランドで、竜が吐く霧のせいで記憶を失った老夫婦が旅をする。記憶と忘却や現代の社会情勢などを視野に入れた作品である。