今回のテーマは「すごろく」。さあ、出る目はいくつ?
さてさて、春恒例の「歴史・時代小説特集」。今回は「日本の歴史すごろく」と題しました。
「ふりだし」から「あがり」まで、サイコロの目にしたがってマス目を進む「すごろく」は、子どもから大人まで、皆さんにおなじみのゲームかと思います。今回は、そんな「すごろく」で遊びながら、本を読んで、さらに縄文時代から明治・大正までの日本の歴史を旅する「日本の歴史すごろく」を作成しました。
遊んでから読んでも良し、読んでから遊んでも良し、もちろん遊ばなくて読むだけでも良しと、良いこと尽くめの「日本の歴史すごろく」。
気軽に手に取って、楽しく遊んで頂ければ……と思います。ちなみに「すごろく」の制作者が少し意地悪なので、なかなかあがれない、つまりゴールできない「すごろく」となっています。ご笑納ください。
縄文~平安編
はじまり、はじまりの巻
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縄文時代
『二千七百の夏と冬(上・下)』 荻原 浩
ダム工事現場で、縄文人男性と弥生人女性の人骨を発見!
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弥生時代
『知られざる弥生ライフ』 譽田 亜紀子
縄文時代の終わり頃、九州北部では大陸から来た人々が米づくりをしていました。大陸の人々はお米を炊いて、もともと暮らしていた縄文人に「食べてみてよー」とおすそ分け。恐る恐る口にした縄文人は、美味しさビックリ!
……これが、お米と日本人の出会いだと考えられているそうです。「食わず嫌い」しなかったご先祖様に感謝ですね(モグモグ)~。『知られざる縄文ライフ』とあわせてオススメです。 -
大和時代
『空色勾玉』 荻原 規子
ステキな勾玉、貰ったよ!
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飛鳥時代
『日出処の天子(1)~(7)』 山岸 凉子
厩戸皇子に話を聞いてもらう
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奈良時代
『与楽の飯』 澤田 瞳子
東大寺造仏所の現場作業員となる
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平安時代
『牛車で行こう!平安貴族と乗り物文化』 京樂 真帆子
はじめてのカーライフにまつわる心配事やお悩みは、1000年前も同じ。ドライブ前の点検、車や牛選びのポイント、駐車する場所の探し方、上座と下座をはじめとする牛車内でのマナーについて、詳しく教えてくれるのがこの本です。一家に一冊欲しいくらいですね~。
ちなみに、すごろくで「牛車で苦手な人と乗り合わる」不運に見舞われたのは、かの紫式部。『紫式部日記』の中に、この場面があります。
鎌倉~室町編
鎌倉殿もサバイバルの巻
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平家滅亡
『源平六花撰』 奥山 景布子
ご存知、津島市出身の作家・奥山景布子先生のデビュー作。源氏・平家にまつわる6人の女性を主人公にした短編集です。
源平合戦に巻き込まれ、深く傷ついた女性たちが、物語の最後に力強く前を向く──。その時の彼女たちの凛とした顔が、あなたの目の前にもきっと浮かぶはず。歴史小説は、現代を生きる私たちの陸続きに存在し、だからこそ物語は読まれ続けるのだと思います。 -
鎌倉文化
『マンガでわかる天才仏師!運慶』 田中 ひろみ
源頼朝、「慶派推し」に!
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元寇
『異国合戦 蒙古襲来異聞』 岩井 三四二
蒙古襲来!!
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武家社会
『北条義時 小説集』 海音寺 潮五郎ほか
大河ドラマの主役に選ばれる!
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東山文化
『銀閣の人』 門井 慶喜
足利義政、東山の別荘にひきこもる
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戦国の世へ
『室町は今日もハードボイルド』 清水 克行
本によると、室町時代とは「やられたらやり返す、場合によっては、やられてなくてもやり返す」が美徳とされる時代。登場するのは、寺院が年貢を横領した武士をガチで呪う(お寺なのに!)話や、浮気された妻が新しい女の家を叩き壊す話など……うーん、こわいっ!
しかし当然ながら、当時には当時の考えがあり、当時の「正義」もあったのでしょう。著者は、一昨年制作されて話題となったNHK「光秀のスマホ」の時代考証も担当されています。
戦国時代編
主役だらけで大変?の巻
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信長
『信長さまはもういない』 谷津 矢車
わーい!信長さまから「秘伝書」と犬山城をいただいたよ
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政宗
『戦国武将を癒やした温泉 名湯・隠し湯で歴史ロマンにつかる』 上永 哲矢
伊達政宗、落馬して骨折!
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光秀
『妖しい戦国 乱世の怪談・奇談』 東郷 隆
秀吉に追われる光秀、己の幻を見る
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秀吉
『愚か者の城』 矢野 隆
すごろくに登場する「あの上司」とは、もちろん織田信長のこと。
作中で、秀吉は頭を床に叩き付けられ→またがられ→頬を叩かれ→「迷う暇があるなら走れ。御主は走る以外に能のない男であろうが」と言われます。現代から見ると、とんでもない「パワハラ」でしょうが、その場面で秀吉は「自分はなににむかって走るのか?」と自らに問います。さて、秀吉が見つけたゴールとは?是非、本にてご確認下さい。 -
清正
『戦国武将の土木工事』 豊田 隆雄
津島市ゆかりの戦国武将・加藤清正は、「城づくり名人」として知られています。城だけじゃなく、名古屋城や江戸城の石垣も清正の手によるもの。うーん、隈研吾か安藤忠雄か……ではなく、当時の城や石垣は実戦を想定し、様々な防衛機能を備えた「要塞」。詳しくは、本をお読み下さい。
ちなみに、熊本城は270年後の西南戦争では西郷軍をはね返し、「おいどんは官軍に負けたのではない、清正公に負けたのだ」と西郷に言わせたとか。凄っ! -
家康
『将軍家康の女影武者』 近衛 龍春
女中・卯乃、湯殿に現れた刺客から家康を救う
江戸時代編
禍福は糾える縄の如しの巻
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グルメ
『天涯の海 酢屋三代の物語』 車 浮代
すごろくにある「知多郡半田村の酒造りの家」とは今や「ポン酢」「納豆」でも知られる「ミツカン」創業家のこと。世界に誇るジャパニーズ・フード「江戸前寿司」誕生の裏には、酒粕を使った「粕酢」の発明がありました。
この小説では、「粕酢」に挑んだ三人の又左衛門の挑戦と苦闘の日々を熱く描きます。いやぁ、ゼロからの「ものづくり」って、いつの時代もドキドキするし、応援したくなりますよね~。 -
飢饉
『いも殿さま』 土橋 章宏
スイーツ好きの代官、サツマイモ栽培を奨励
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夫婦
『わかれ縁』 西條 奈加
金にも女にもだらしない夫に愛想をつかす
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美容
『ウチの江戸美人』 いずみ 朔庵
江戸時代から来た「江戸美人ちゃん」とルームシェア
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災厄
『パンデミックvs.江戸幕府』 鈴木 浩三
人口過密都市・江戸をパンデミックが襲う!
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園芸
『本日も晴天なり 鉄砲同心つつじ暦』 梶 よう子
代々、江戸城下・大久保の地を守ってきた「鉄砲同心」。戦時であれば、武功をあげて立身することも夢ではないのですが、平時の世では、将軍の警護が主な役目。禄高が上がる見込みはありません。
そこで、硝石、硫黄、木炭など火薬の原料を、つつじの肥料に転用した「つつじ栽培」の内職に励みます。すると、季節になると大勢の花見客で賑わう観光名所に!……銃ではなく、ハサミを手にしたお武家一家の奮闘が賑やかに描かれます。
幕末編
時代は動く、人も動くの巻
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大政奉還
『残り者』 朝井 まかて
徳川家、江戸城の引き渡しを命じられる
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ロマンス
『荒城に白百合ありて』 須賀 しのぶ
会津の少女、薩摩藩士と恋に落ちる
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改革
『かちがらす 幕末を読みきった男 』 植松 三十里
「薩長土肥」の「肥」を率い、「肥前の妖怪」、「佐賀の日和見」とも呼ばれた肥前佐賀藩主・鍋島直正。16歳で家督を継ぎ藩主となりますが、藩は多額の借金を抱えていました(ま、当時は日本中のほとんどの藩が財政難のようでしたが……)。財政難に苦しむ藩をさらに「城の火事」という不運が襲います。
どん底まで落ちた今、もう誰も文句は言わない!……不運を好機に変えるチャンスととらえ、藩政改革に挑んだ直正の挑戦の日々を熱く描く小説です。 -
外交
『万波を翔る』 木内 昇
「幕臣・渋沢篤太夫」とは、「渋沢栄一」のこと。ご存知、昨年の大河ドラマの主役、そして2024年度に登場する新一万円札の顔です。作中には、帳面を持った渋沢が主人公に金の談判をする場面が登場。「これからの世は、こういう男が伸(の)していくのかもしれん」という主人公の述懐は大当たりとなりますね。
あ、書き忘れていました……小説の主人公は幕府の外交局に勤めることになった田辺太一。先が見えねぇものほど、面白ぇことはねぇのだ……そう語る彼もまた、とても魅力的な人物です。 -
娯楽
『ぼくせん 幕末相撲異聞』 木村 忠啓
勧進相撲で禁じ手を使い、角界から追放される
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最新技術
『レンズが撮らえた幕末維新の日本』
人生初の写真撮影に挑む
明治、大正編
人生いろいろ、双六いろいろの巻
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洋食
『拙者は食えん! サムライ洋食事始』 熊田 忠雄
パン牛肉の焼もの様々、ことごと感嘆なしたなり……
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事件
『サーベル警視庁』 今野 敏
帝国大学講師の刺殺体を発見!!
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恋愛
『命みじかし恋せよ乙女 大正恋愛事件簿』 中村 圭子
「恋愛事件」が頻発する
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図書館
『夢見る帝国図書館』 中島 京子
上野の図書館の歴史と、本と図書館を愛する喜和子さんの半生が交互に綴られる小説。「お金がない。お金がもらえない。書棚が買えない。蔵書が置けない。図書館の歴史はね、金欠の歴史と言っても過言ではないわね」……かつて図書館に「半分住んでいたみたいなもの」と語る喜和子さんの言葉です。
設計した建物の4分の1しか建てられず、戦争が起こるたびに予算を削られる……あ、金欠の話ばかりではなく、図書館の奮闘ぶりもちゃんと描かれていますよ!すごろくにある「ビブリオテーキ」は、福沢諭吉の『西洋事情』に記述があります。 -
博物館
『博覧男爵』 志川 節子
すごろくの「パリ万博」とは、1867年のパリ万国博覧会のこと。
主人公・田中芳男は、自ら採集した「虫の標本」などを携え、幕府物産方の一員として使節団に参加。パリで、諸外国と比べて近代化が著しく遅れていることを痛感し、博物学を基礎とする総合施設の設立を夢見ます。信州・飯田で生まれ、子どもの頃から石や虫、薬草などの「自然」をこよなく愛し、後に「日本博物館の父」と呼ばれることとなる芳男。大好きなものを見つけ、愛しぬいて、生涯の仕事にする……そんなキラキラと眩しい生涯の物語です。 -
文学
『ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石』 伊集院 静
ノボさん、図書館の談話室で夏目金之助と出会う