『町のけんきゅう』 に登場する津島
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『町のけんきゅう』 とは?
2000年に福音館書店から出版された児童書『町のけんきゅう』は、1974~99年にかけての人々の暮らしや風俗を観察・採集し、ありのままを記録した「考現学採集」をもとにした本です。
『町のけんきゅう』の絵を担当されたのは、津島市出身の画家で絵本作家の伊藤秀男さん。ページをめくると、少し懐かしい津島の風景がたくさん登場します。皆さんも、本の中の「津島」を一緒に探してみませんか?
昭和38年(1963)年の津島市産業観光案内図
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表紙
P.2~3
桔梗屋
P.4~5
津島神社参道石碑
玉川屋
“重箱うどん”、深堀り!
“重箱うどん”は、江戸中期からこの地に伝わる漆塗りの重箱に入った具だくさんの手打ちうどんです。うどんの上には、だし巻・湯葉・エビ・地鶏・椎茸・ホウレン草などの具がたっぷり乗ります。
作品に登場する「玉川屋」や「水鶏庵」が重箱うどんの伝統を守っていましたが、残念ながらどちらも廃業。現在は「今吉(いまきち)」で味わうことが出来ます。
俗謡「大津江節(おおつえぶし)」では次のように謡われました。
♪ 津島名物 数々あれど くつわに蓮根 重箱うどん
ちなみに津島出身の画家・杉本健吉さんも重箱うどんがお気に入りだったようで、2000(平成12)年に講演のために招かれた際には「久しぶりに重箱うどんでもいただこうかな」と快諾した、という微笑ましいエピソードが残っています。
P.10
P.12
蔵の道
小之座通りは、「蔵並み」が見えることから「蔵の道」とも呼ばれています。
蔵の石垣には「打ち出の小槌」などの縁起物を模した石がさりげなく配置されており、当時の職人の遊び心を感じます。
ちょっと寄り道……
“新鯛”を探せ。
良い水や良い米に恵まれた水郷地帯という地の利に津島神社信仰が相まって、津島は古くから酒造りが盛んなまちでした。
P.16
海部牛乳
明治期に創業された津島市の牛乳メーカー・海部牛乳。佐脇養生社、海部畜産興業、海部牛乳と社名を変えましたが、平成13(2001)年に廃業しました。
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海部牛乳はここ!(昭和61年)
『空から見た尾張・愛知県航空写真集』より
P.22
“川魚文化”を知ろう
僕は、津島のことを人にきいて、だいたいを知ったところによれば、たいへんな泥ぶかいところで、鯰や、うなぎや、鰌や、にょろにょろ、ぬらぬらしたものがいっぱいいるところのようで、ちょっと、行ってみたいという気にはならず、半世紀が経ってしまった。鯰への原郷愁か。
(中略)
半世紀ぶりで、津島を訪れたときも、ゆく先にたずねる人があるわけではなく、待っている人があるわけではなし、(中略)「なまず丼」というのがめずらしく、泥の中の魚は、案外、美味なものである。それには、なにかサンボリックな意味がふくまれているようである。『金子光晴全集』第8巻 「鯰の味」
津島市出身の画家・絵本作家 伊藤秀男さん
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『町のけんきゅう』を描いた伊藤秀男さんは、1950年に津島市で生まれました。1976年の初個展以来、全国各地で個展を開き、1991年に出版された『海の夏』(ほるぷ出版)で第41回小学館絵画賞、2002年、『けんかのきもち』(文/柴田愛子, ポプラ社)で第7回日本絵本大賞を受賞。2010年、『うしお』(ビリケン出版)で「IBBYオナーリスト(優良作品)」に選出され、スペインでの授与式に出席しています。
2016年には、『タケノコごはん』(文/大島渚, ポプラ社)で第21回日本絵本賞を受賞。ほかに、『さばうりどん』、『うみのむにゃむにゃ』、『おうしげきだん』、『虔十公園林』などの絵本で知られています。
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海部・津島が舞台となっているその他の伊藤秀男さんの作品について
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『ひみつのなつまつり/こどもザイレン』
1989年に出版された『ひみつのなつまつり/こどもザイレン』は、7月下旬~8月にかけて、尾張西部、特に木曽川流域を中心に行なわれる祭礼「子供ザイレン(「オミヨシサン」ともいいます)」を題材とした作品です。「オヤブン」とよばれる年長の子どもが大活躍します!
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バスの車内の場面には「天王祭」のポスターが!
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少し懐かしい名古屋のデパートの屋上
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伊藤秀男さんの作品は「ふじいろ文庫」でご覧頂けます。こちらも是非ご覧下さい。